以前、柿渋を木材に塗りその上に乾性油や蜜蝋ワックス等を塗ることで、撥水性を向上させるテストを行いました。
柿渋自体には「撥水性」とまで言える効果はありませんので、その効果が必要な場合には、仕上げにオイルフィニッシュや蜜蝋ワックスを塗る事はとても有効な一手段だと思います。
今回お問い合わせをいただき、(柿渋入りのワックスを作りたいが)柿渋と油・蜜蝋は混ざるのかテストしてみることになりました。
柿渋の上からワックスを塗るのと、柿渋を混合したワックスを塗るのでは、効果や仕上がり状態に差が出る可能性があるのではという危惧もありましたが、そのような製品も販売されているようですし、まあ塗装が一度で済むのであれば確かに便利かもしれないと思い、柿渋ワックス(?)を作ってみることにしました。
柿渋(左)は無臭品を使用しました。乾性油は桐油(中央)と亜麻仁油(右)の2種類です。どちらも植物の種子から採れる油ですが、桐油の方が色が濃く粘度も高いです。成分の違いについては不勉強で判りませんが、見た目がかなり違うのでこの2種類で試してみました。
左から柿渋、桐油、亜麻仁油です。
今回使用した晒し蜜蝋です。硬いので必要な重量分を削り取るのに苦労しました。
2回目で使用したレシチンパウダーです。
柿渋50cc、桐油50cc+柿渋20cc、亜麻仁油50cc+柿渋20cc、それぞれを湯煎したものに、蜜蝋を25gずつ入れて溶かしました。蜜蝋の融点は60度~67度とのことですが、溶けにくかったので湯煎温度を70度くらいに上げ、溶かしきりました。
先ず、常温の桐油(左)と亜麻仁油に柿渋を入れましたが、やはり分離します。(柿渋が下部に溜まっています。)
次に、湯煎しながら、削り取った蜜蝋を入れました。
左から亜麻仁油+柿渋、柿渋のみ、桐油+柿渋です。
湯煎温度60度程度ではなかなか溶けなかったので、70度以上に上げて攪拌すると、3種類とも蜜蝋が溶け始めました。
亜麻仁油+柿渋(手前)、柿渋のみ(奥)、桐油+柿渋(右)
”一応”蜜蝋が全て溶けた状態です。
プラスチックの容器に入れ替えると、温度が下がって蜜蝋ワックスが凝固し、柿渋と分離してしまいます。
左から柿渋+蜜蝋、桐油+柿渋+蜜蝋、亜麻仁油+柿渋+蜜蝋です。
容器に入れ替えた直後で、まだ温かい状態です。
※余談ですが、使用した道具・容器に固まった蜜蝋を取り除くために、溶剤(今回使用したのはテレピン油)を用いなくてはならず、結構大変でした。
お問い合わせをいただいたお客様からのアドバイスで、乳化剤(界面活性剤)としてレシチン(大豆由来)を使用してみました。
外国製の自然素材塗料にも(安全な物質だと思いますが)界面活性剤は使用されているようなので、水溶性・非水溶性両方の物質を混合(完全に溶け合うのではなく分散させる、乳化・エマルジョン化だそうです)するためには、やむを得ないものなのでしょう。
レシチンは、自然界の動植物の全ての細胞に含まれているらしく、健康食品としても販売されているようなので、使用しても安全ではと思いました。
他の材料に対するレシチンの比率は、乳化剤を使った手作りクリーム(化粧品)の情報を参考に、3%程度で試しました。(湯煎で材料を混合後、最後に添加しました。)
実際には家庭用のハカリで0.1グラムが量れなかったので、1回目と同じ柿渋50cc・桐油50cc+柿渋20cc・亜麻仁油50cc+柿渋20cc、それぞれに対しレシチンは、2グラム使用しました。
1回目と同じ作業を行い、湯煎・攪拌して蜜蝋が溶けた状態です。亜麻仁油の柿渋との分離が良く判る画像です。桐油はそうでもありません。
桐油+柿渋(左前)、柿渋のみ(左奥)、亜麻仁油+柿渋(右)
乳化剤のレシチンパウダーを投入。湯煎温度73度でした。
撹拌してレシチンパウダーを溶かしましたが、結構溶けにくかったので、この時点での混合がよかったのか(予め柿渋と混ぜておくべきだったのか)、少し後悔です。亜麻仁油+柿渋の状態が随分変わりました。
別の容器に入れ替えましたが、この時点では分離していない様子です。
左から柿渋+蜜蝋+レシチン、桐油+柿渋+蜜蝋+レシチン、亜麻仁油+柿渋+蜜蝋+レシチン
冷えて固まってから、1回目と2回目のものを比べてみました。
上段左から柿渋+蜜蝋+レシチン、桐油+柿渋+蜜蝋+レシチン、亜麻仁油+柿渋+蜜蝋+レシチン
下段左から柿渋+蜜蝋、桐油+柿渋+蜜蝋、亜麻仁油+柿渋+蜜蝋
上のものを、それぞれひっくり返し割ったものです。
上段左から柿渋+蜜蝋+レシチン、桐油+柿渋+蜜蝋+レシチン、亜麻仁油+柿渋+蜜蝋+レシチン
下段左から柿渋+蜜蝋、桐油+柿渋+蜜蝋、亜麻仁油+柿渋+蜜蝋
写真では判りにくい特徴もありますので、補足してみます。
柿渋染め製品を販売しています。 柿渋染め帆布(生地)の販売も始めました。