杉の板に柿渋(無臭品)を塗り、数日発色させた後、乾性油・自作の蜜蝋ワックスとリボスを塗りました。
柿渋のご紹介と販売のページでもお断りしていますが、柿渋の防水性・撥水性はそれほど強いものではありません(塗り方などによっても差異はありますが)。
また、柿渋の耐久性を増すにはどうすればよいか等のご質問をいただくことがあります。上から乾性油などを塗ってはとお答えしておりましたが、実際に使った事がありませんでしたので、今回、簡単な方法ですが試してみました。
柿渋の上から化学塗料を塗るのでは意味がありませんので、自然系(?)のものをということで、良く耳にする亜麻仁油・荏油(荏胡麻油)・蜜蝋ワックス(自作)・リボス(のオイル系のもの)を試しました。
木製品の仕上げに乾性油を塗る方法はオイル・フィニッシュとしてよく使われます。塗膜を作るのではなく、オイルが木に浸透することで保護の効果があるとされるもので、木の素材感が残り、木材の呼吸を妨げないと言われます。日常のメンテナンスもオイルを薄く塗るだけなので簡単です。
※実験の数年後の様子を追記しました。
亜麻仁油(左)と荏油です。色もにおいも亜麻仁油の方が少し濃いです。
蜜蝋(左)と荏油で蜜蝋ワックスを自作しました。原料はこの二つだけです。
※蜜蝋以外に木蝋とカルナバ蝋というのがあり入手しましたので参考まで→木蝋とカルナバ蝋
※「蝋」は英訳すると「ワックス」なので、「蜜蝋ワックス」では重複ですね。
重量比3:7で、湯煎60度にて蜜蝋を荏油に溶かして作りました。熱いうちに容器に流し入れます。
不思議ですが、荏油の方が分量が多いのに、出来た蜜蝋ワックスは常温では結構硬い固形です。
リボスのオイル系塗料。
下の写真では同じ色のように見えますが、クノスは少し濁った液体です。
記載されている成分を見てみると、アマニオイルが共通で、その他各々に数種類が含まれているようです。特にクノスは成分に「天然樹脂・・・」や「マイクロワックス」というものも記されています。
杉の板(下半分)に柿渋を塗り数日発色させた後、同じ板に4種類のオイル・ワックスを塗りました。
柿渋はまだ十分発色しておらず薄い色合いです。
蜜蝋ワックス以外は液体なので、布に染み込ませてさっと塗るだけです。
固体の蜜蝋ワックスは、擦り込むような感じです。塗っていると、指先の体温で柔らかくなります。
乾燥後に、霧吹きで表面に水をかけ、撥水の様子を見ました。
【亜麻仁油】
2回塗布
【荏油】
2回塗布
【蜜蝋ワックス】
2回塗布
【リボス】
メルドス
+
クノス
各1回塗布
無塗装部分では水滴が染み込んでしまっているのに対し、何らかの塗装をした部分は水滴が残っています。
乾性油(亜麻仁油・荏油)の部分と蜜蝋ワックスの部分では、水滴の形状が異なります。
蜜蝋ワックスとリボスの部分の水滴はほぼ同じ形状です。
↓ 数分後の様子です。
乾性油(亜麻仁油・荏油)については、下地に柿渋を塗った部分とそうでない部分に差が出てきました。
蜜蝋ワックスでは、下地に柿渋の有り無しで差はありません。
リボスも蜜蝋ワックスと同様です。(元々茶色の液体で、塗装部分が僅かに黄色です。)
蜜蝋ワックスとリボスの部分を比べると、僅かに蜜蝋ワックスの水滴が丸いような・・・。
柿渋だけでもある程度水を防いでいることがわかります。
さらに日当たりの良い窓際に移動させて10~20分後には、蒸発と木への染み込みのため、下のようになりました。
水滴が残っているのは、柿渋+亜麻仁油、柿渋+荏油、蜜蝋ワックス、リボスの部分です。
・蜜蝋ワックス ・リボスのオイル系塗料 (※蜜蝋ワックス>リボスオイル) |
> | ・柿渋+亜麻仁油 ・柿渋+荏油 |
> | ・亜麻仁油のみ ・荏油のみ ・柿渋のみ |
> | ・無塗装 |
発色についてお問い合わせをいただきましたので、その後の様子を掲載させていただきます。
(ダンボールの箱の中から見つけましたが、数年~10年近く経過していると思います。)
亜麻仁油の下と荏油の下に塗った柿渋の発色は、柿渋だけの場合と同じです。 蜜蝋ワックスの下の柿渋も発色はしていますが、わずかに薄い色です。 リボスは塗料自体がオレンジがかっているので柿渋自体の発色は良く判りません。
撥水効果という点では、およそ数年前と同じ結果(順位付け)だと思います。ただ、少し異なるのは、(噴霧作業の誤差かもしれませんが)今回は、蜜蝋ワックスとリボスも、下に柿渋を塗った部分の方が、僅かですが撥水効果が高いように見えました。
柿渋染め製品を販売しています。 柿渋染め帆布(生地)の販売も始めました。