・・・本来、伊勢型紙は染色(型染め)のための型紙にすぎません。染め上げられた美しいきものは称賛を受けますが、それを生み出すための一道具が人々の目に触れる機会は稀です。・・・
伊勢型紙の型地紙(かたじがみ:または渋紙とも呼ばれます。)は、手漉きの和紙を手作業で柿渋を用いて張り合わせ、天日に干して作られます。
その紙を用いて、型彫師が卓越した技と時間を費やして精緻な文様を彫り上げたものが伊勢型紙です。
この写真の型紙は、絹の紗と漆を用いて「紗張り(しゃばり)」という、染色のための補強が施されています。
渋紙の型紙を用いる江戸小紋などの染色作業(型染め)自体も技術を要すると言われますが、高い技術が発揮された型紙(染め型)があってこそ、繊細な美しさを表現することができます。
染め上げられた生地の美しさもさることながら、型紙そのものも、古くから日本に伝わる素晴らしい材料と高い技術が凝縮した、贅沢なもの(だった)といえるのかもしれません。
その本来の価値と文化が継続されますように。